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Officine Panerai LUMINOR 1950
47mmケースとドーム風防と言う名の麻薬 今回はパネライの話である。 まず基本的にロレヲタさんのワタシにとって、パネライというのは その歴史の背景からしても無関係な時計ではない。 というのも戦時中のパネライを製造していたのはケースも含めて 全てROLEXであるし、当時のパネライウォッチはパネライというよりも ROLEXとパネライのコラボウォッチであったと言う方が正確だからだ。 またMartin Skeetの有名なVintage ROLEX sport modelsを見ても、 著名なオークションハウスは戦中、戦後のオリジナルパネライを ROLEXのサブマリーナなどと絡めてジャンル分けしている。 そういった理由により以前からパネライは注目してきた時計であったのだが、 オリジナルは高額でとても手が出せるシロモノではない。 かと言って現行品の主流である40mmや44mmのモデルは 戦中・戦後のオリジナルパネライとはかなりかけ離れた意匠を纏ってしまっていて、 ネオラグジュアリー・スポーツウォッチといった趣で個人的に惹かれない。 そういう訳で、現行品では唯一オリジナルと同じ47mmのケースを纏い、かなり忠実に 戦後の6152/1というモデルを再現したリミテッドモデルである LUMINOR1950への思いが次第に強くなっていった。 そんなある日、某質屋系安売りイベントに出掛けて時計コーナーを 物色していると、隣に居合わせた男性の腕に巨大なパネライが・・・・・ ヤヴァイ! ヤヴァ過ぎる! なんというカッコ良さ! 何だかよくわからんけどスゲー物を見てしまったという感覚に陥り、頭が真っ白に。 そのまま一目散に会場を後にすると、懇意にしている渋谷の ショップへ直行し、新品在庫があるのを確かめ、後日購入となった。 (実は後から判ったのだが、件の男性の巨大パネライは1950ではなく RXWのマリーナミリターレであった・・・・・・・ 凄いオチですね、ハイ ) 47mmもある特大なケース、インデックスをくり貫いたダイヤルと その下の夜光板、ガッシリとしたリューズプロテクター、そして 物凄い湾曲率のモンスタードーム風防、 その全ての特徴がワタシにとってエクストリームであり、異次元であった。
みんなを幸せにする時計 それでは今回の主役、LUMINOR1950を詳しく見ていこう。 パネライのファーストウォッチたる初代ラジオミールから 戦後のルミノールまで一貫したケースの意匠の元と なっているのは、御存知ROLEXのクッションオイスターである。 1950も基本的なアウトラインはクッションケースであるが、 かなり厚みがあるために、ケース上面はエッジが効いた クッション形状をしているが、裏面は腕に優しくするために 全てのエッジは落とされている。そのためにケースを横から見ると 船を横から見るのと同じような形状をしており、非常に複雑な 三次元カーブを描いている。 このケースにベゼルから続く肉厚のサファイヤドーム風防が付いており、 その大きさと相まって、まさに「膨らんだ座布団」という感じ。 ケースの迫力は特筆モノだが、それと同時にケースの仕上げも これまた格別のモノがある。流れるようなラインのヘアライン仕上げは 非常に美しく手仕上げが成されており、手抜きが無い。 なるほど流石にこの時計はカルティエが製作しているだけはある。 製品としてのクオリティーは超一級品だ。 またそれはリューズプロテクターを操作した時にも如実に感じられ、 カッチリとした操作感、レバーの仕上げ&感触の良さ、などが非常に 心地よい。 パネライ風のリューズプロテクターを持つ他の時計はここの部分が ダメな物が多い。レバーとリューズとの接触部分の緻密な設計を怠り、 リューズにスプリングを仕込んで内側からレバーを押す機構をオミットすると、 結果的にレバーがガタガタになり動作も不安定になる。 次にダイヤルであるが、これは非常に珍しい構造になっていて インデックスと数字の部分がくり貫かれている。その下には 夜光塗料を塗ったプレートが位置するので、くり貫かれた部分だけが 発光するようになっている。 ダイヤル自体はフィニッシュも美しいマットブラック仕上げになっていて、 LUMINORの文字がクリーム色のプリントで施されている。 一つ残念なのは、ドーム風防の湾曲部分が丁度ダイヤルの 12、3、6、9、の部分と重なってしまい、時計正面から見ると それぞれの数字が上下左右に圧縮されて非常に小さく感じることだろうか。 風防が湾曲していない部分から覗き込むとそれぞれの数字は 適度な大きさなのだが、光の屈折で元の大きさの3/4位に感じる。 3針はそれぞれ18kゴールド製で、デザイン面でも、また金が織り成す 色のアクセントの面でも、非常に満足のゆく出来栄え。 さてこの1950であるが、この時計がいかに非日常なシロモノであるかを 理解するためには1950を単体で撮影しても無意味である。 上の画像を見ても判る通り、まさにエクストリーム。 長年の相棒16610が完全に子供時計に見える。 時計オタクからしても非日常物体なのだから、 これを街中に持ち出すともっと面白い。 例えばワタシがサブやシードを着けていても、普通の人は 「ふーん、最近流行りのロレックスね」 でスルーである。 オン、オフ、を問わずスポーツロレックスなんぞかなりの普及率なので 特に誰も意に留めない。 ダトグラフの場合も似たようなもので、あまりの知名度の低さに 殆どの人が気づかずにスルーする。 所有してる時計の中で周囲の反応が一番好意的なのが IWCのGSTパーペチュアルである。 美しいホワイトダイヤルにブレスからケースへと続く流れるような フォルムに、多くの人が 「綺麗で大きな時計ですね。高そうだなぁ。なんてメーカーですか? いんたー? へーそういうメーカーの時計なんですか」 こんな感じでコメントしてくれる。 この後興味がある人とは時計トークが始まるし、そうじゃない人とは 話題を変える。それでオシマイ。 さて上記とは違って最も対応に苦慮するのがデイトナである。 まずデイトナを知らない人は当然スルーであるから問題無い。 ところが知っている人の場合、初対面の人であれ知人であれ、 まずデイトナを目線だけで凝視する。そして話題にはしない。 ところがその目線はこう語っている 「なんだぁ、この男デイトナやってんのかぁ? これ本物?パチモンじゃないの?」 なるほど、目は口ほどに物を言う、というのは本当だ。 その後、目の前にあるデイトナが正真正銘16520であると判ると 今度は上から下まで舐めるようにワタシの人物像を目でチェックするのである。 せめて二番目の行動にさえ移してもらうことが無ければ、と思うのだが 致し方ない。デイトナとはそういう時計である。 では1950の場合はどうか? 結論から言うと、約八割の人が目を丸くして時計に驚く。 これは時計に興味が無い人も有る人も共通。 そして時計に興味が有る人の場合 「へ〜面白い時計っすね!なんて時計ですか? パネライ?パネライって聞いたことあるけどこんな大きい時計だったんですね」by♂ とか 「キャー ヤダー 何このデッカイ時計ー♪ パネライっていうんですかー へー カワイー」by♀ こういう反応が返ってくる。 非常に単純かつ純粋な笑いと共に、このファニーウォッチの 話題で盛り上がる。この時計が1950であると知っている人とも 笑顔で時計トークが出来てしまう。 平和である。 実に平和である。 素晴らしい。 実に素晴らしい。 あれほど忌み嫌われるデイトナよりも高い時計(新品購入時)なのに、 そうであると微塵も感じさせないこのファンキーなルックスが 周囲に笑顔と幸福な時間をもたらすのだ。 後に機械の項目で詳細は述べるが、ハッキリ言ってここまでの ボッタクリ時計でありながらも、ボッタクられたことに対し全く怒りを 感じないのは不思議でもなんでもなく、まさにこの時計が自分を 含めて皆に笑顔と活力を与えてくれるからであろう。
ユニタス6497を通して見えたパネライの本性 〜キングオブボッタクリウォッチ〜 次に機械について見て行くが、実はパネライにおいて機械を 検証することはすなわちオフィチーネパネライ社の「XXXな」企業姿勢を 暴露することに他ならない。 まずヴァンドームグループ買収後から現在のリシュモン支配下における オフィチーネパネライ社の機械に対する基本姿勢を形容すると、 「都合の良いムーブメントヒエラルキーの利用」という事になる。 これはつまりベーシックとなるモデルには安価なETAを載せ、 高額なモデルや限定品には各種のスペシャルムーブを載せて 裏スケにし、高価格の根拠とさせる手法である。 まあ企業としては非常に上手いやり方であろう。 詳しく見ていくと、ヴァンドームグループにパネライ社が買収される 前から現在における手巻きムーブメントにはETA6497、買収後に 発表された自動巻きのモデルにはETA7750からクロノグラフパーツを撤去した物、 この二つがベーシックな基本ムーブになっている。 初期には自動巻きのパワーリザーブモデルとGMTモデルにETA2892を ベースにしたモデルも存在したが、現在では全てETA7750にパワリザ又は GMT機構を取り付けたムーブを採用している。 なるほど、上記の機械を載せて大体40万〜50万のターゲットゾーンで ブレスレット抜きの時計を販売しているのだから、これは確かに美味しい商売である。 買収後初期の数年はETA2892、ETA6497、ETA7750、と3本柱のベースムーブで 展開してきたが、商売が美味し過ぎたのか、まずETA2892ベースの自動巻き パワリザ&GMTをETA7750ベースの機械に変更し、スモセコを持たせ パネライ全体の意匠に合致させた。 その後商売的にあまりにも美味し過ぎたETAユニタス6497ベースの機械を、 ブリッジ分割から見直し緩急針にスワンネックを取り付け、ブラッシュアップしたことを アピールするために当該モデルのケースを裏スケに変更した。 この新しいバージョンのETA6497こそ、今回の1950に搭載されている ムーブメントである。 画像で1950の右側に写っているのが、正真正銘ETA社からデリバリーされた ままの状態のETAユニタス6497である。お値段は約6800円くらい。 かたや左のパネライ1950は新品定価約90万円。並行で購入したワタシの 支払額は102万円である。二つ並べると、とってもとってもステキな光景。 パネライ版ユニタスと素ユニタスとの違いは、 1)パネライはハイビート、素ユニタスはロービート 2)ブリッジ分割が違う 3)スワンネックが付いている 4)要所のネジがパネライはブルースティール 5)パネライはブリッジや歯車の面取り、磨きが綺麗 6)パネライは巻き上げが圧倒的に軽い こんな感じである。 確かに素のユニタスと比べればパネライの機械は非常に良質な トリートメントを受けていることが良く判る。 しかしながらユニタス6497の良質なトリートメントは他のメーカーだって 幾らでもやっていることであり、ジャッケエトアールやエポスなどの ユニタス搭載機種の素晴らしさと手ごろな価格などを考えると、 定価90万前後の1950にこのレベルのトリートメントを受けた ユニタスを搭載させることは、ケースがステンレススティールであることを 考えても「ボッタクリ以外に説明がつかぬ」と言わざるを得ない。 しかも最悪な事に、2004年のSIHHで発表されたラジオミールブラックシール と言うモデルが、1950と本質的に同じ二重ダイヤル構造を持ち、機械も全く 同じでありながらも定価が45万円前後という価格で発表されたのである。 これは完全に1950がボッタクリであったことをオフィチーネパネライ社自身が 認めていることと同じであろう。 もっとも47mmもの巨大ケースに合致する適切な大きさのムーブが 他にあるか?と考えればユニタス以外に選択肢が無かったという事情も 理解できなくはない。ユニタス以外の機械を載せたらムーブとガワの大きさの 吊り合いが取れず、スカスカ時計になってしまうことは明白だからだ。 逆にそう考えるとオリジナルと同じ47mmケースのパネライを 発売するために、載せる機械の大きさ、47mmという大きさを受け入れられる 潜在的ユーザー(購買者)の数、などを逆算すれば必然的に1950が このようなパッケージングで発売されたことに対し、ある種の合理性も 感じ取れると思うのはワタシだけであろうか。
革ベルトとBOXなど 〜デカいことはいいことだ!〜 最後に革ベルトや付属品、BOXなどにも言及していこう。 まずパネライと言えば一つの楽しみが革ベルトであるが、 1950には幅26mmという物凄い革ベルトが付くようになっている。 この26mmという幅が尾錠にまで続くのだから、腕に巻いた時の 存在感は凄まじい物がある。 デフォルトで付属しているバンドは二本で、カシミア色のカーフと ワインレッドのカーフになっている。 ワインレッドのカーフは微妙な色合いで個人的に好きになれず全く触っていないので よくわからない。そこで普段はカシミア色のカーフを使っているのだが、 これがまた使い込むとイイ色合いに変化してきてなかなか オールドパネライっぽくなってくる。感触もいいし、満足度も高い。 希望を言えば、サイドの厚みがもうちょっと欲しいところと、 有名なDirkのベルトの様にザックリと切り落とした感じにして欲しいところだろうか。 ちなみに尾錠はデフォルトだと迫力が足りない物が付いてくるので 塊バックルに交換してある。 それにしても圧巻なのはBOXだ。 なんたるデカさ。一言で言うと、無駄にデカい。 基本的に豪華なデカ箱は大歓迎だが、ここまで来ると 持ち運びに苦痛を伴う。しかも異様に重い(汗 ヲイヲイ、大きい箱もサービスのウチなんだからさぁ、というのがパネライの方針 なんだろうから、ここは一つ御愛嬌と言ったところか。 ちなみに箱に横たわる白っぽい物体は、限定パネライ証書?っていう感じの ペーパーで、ボナーティ社長の直筆サインが書き込んである。 この辺の演出もまさにパネライ流。凄いぞ!マンマミーア!
1950を持ち続けるということ パネライの中でも一際大きい1950。 この時計を所有し、向かい合っていくのはなかなか大変だ。 それは別に管理が大変という意味ではないし、ユニタス6497ベースだけあって 掛かる費用も大したことはない。 一番大変なのは、自分の感覚を正常に保つのが難しくなるという点である。 とにかく大きいし、デザインも素晴らしい。ドーム風防の醸し出す異様な 光景も見とれんばかりである。しかしこれに慣れ過ぎると、自分の愛する 他の時計たちをちっぽけなオモチャに感じる麻痺状態に陥る危険がある。 なんと言うか、47mmケースとサファイヤドーム風防の織り成す迫力は 「ウォッチドラッグ」、ある種の麻薬である。 これはかなり強烈で、日常からこの時計がイレギュラーな大きさであることを自覚し 積極的に他の適切な大きさの時計とローテーションしないと、確実に感覚障害に陥る。 しかもオン・オフ問わず、周囲よりかなりの視線を集めるのでますますこの時計の エンターテイメント性に酔いしれてしまう。 超一流のファンキーウォッチであり、 超一流のウォッチドラッグであり、 超一流のスーパーボッタクリウォッチである。 だから安易に「オススメ」なんて言えません。 覚悟の上、溺れたい奴は買ってくださいまし。 そして見事に「コッチ側」へ来て1950の毒で逝った奴には「 ネ 申 」の称号を献上し、 骨も拾ってやるから(笑 |
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